三 番 瀬(sanbanze)

三番瀬って知っていますか?東京湾最奥部に位置し、江戸川放水路の河口付近の一帯を指し、市川市、船橋市、浦安市、習志野市の沿岸に接する約1,600haにわたる浅い海域(水深5m未満)のことです。sanbanseでは無く、sanbanzeが正しいそうです。古くからスズキ・カレイ・アサリ・パカガイ・ノリ等の漁場となっており、川鵜やハマシギ、コアジサシなど多くの野鳥の飛来が見られます。「三番瀬」と言うからには、一番瀬、二番瀬も有るのではと、思ったけれど、古い文献にもその記載は無いようです。文献に無いだけで、その昔はきっと有ったんだと思いますよ!だって、その方がロマンが有るじゃないですか・・・・
近くに住みながら、今まで興味を示さなかったのは何故だろう・・・「三番瀬」の名称が耳や目に入って来るようになったのはつい最近の事・・・と言うと、余りにも無知だとお叱りを受けそうですが、そうなのです。なんだか、”ゴロの良い響きの名称だ”くらいにしか思っていませんでした。

それが今回、広報の「三番瀬見学会」に応募し、船で三番瀬に上陸する機会を得ました。東京湾に、こんなにも沢山の生物が生きているなんて・・・・目からうろこ、感動の1日でした。 
2006.06.24─



人工干潟の斜向かいに有る
塩浜漁協前より乗船

護岸より海辺に下りるにはこの方法しかない?

遅々として進まない護岸修復工事

近代的な浦安ホテル群が立ち並ぶ目の前で、今日もアサリを拾う漁師さん

人工澪の航路を示す支柱には
それぞれ川鵜が羽を休めている

自然干潟に到着。
ここまでは船で来るしか方法が有りません。


三番瀬、自然干潟で見た生物

マテガイ(筒状の二枚貝)

独特の細長い形状をし、危険を感じると、
水管を切って逃げる。

タマシキゴカイ

糞塊はモンブランと呼ばれています

サルボウ

赤い肉の色を猿の頬になぞらえてサルボオと呼ばれる。東京ではアカガイの代用品として市場に出回っている。殻の放射肋が42〜43本であればアカガイ、それより少ない場合は本種もしくはクイチガイサルボオ(32〜33本)かサトウガイ(37〜38本)である。


シオフキガイ

食用とするバカガイに似ているが、殻が薄く、角張っている。肉が少なく、砂吐きが悪いためあまり食用としては利用されていない。

ヒトデ
裏側

クシノハクモヒトデ

足が取れています。

日本近海の日本海と太平洋岸の銚子以南のみに生息しています。磯などの浅い岩場に多く見られ、岩の下にかくれています。平たい五角形の体に細長い腕があり、はいまわるようにして動きます。(マリンワールド電子辞書より)

キセワタ(左)とカガミガイ(右)
キセワタは
内湾の砂泥底に多く分布する。体表から粘液を出して砂中を潜行する。薄い殻が外套楯内にあるが、外からは見えない。
なお、この殻に2型があり、複数種を含む可能性が高い。

ワレカラ

藻の切れっぱしみたいですが
オゴノリ と同じ保護色で
海老や蟹の仲間の甲殻類なんですって!
信じられない!

ツメダイが作った砂茶碗
不思議だ〜!

触ってみたら、水泳用のタオルの
ゴム製のセイムと同じ感触だった。

貝殻がいっぱいくっついたスゴカイイソメの巣

中身は空っぽだった
砂底の干潟面に、貝殻などの漂着物を集めた棲管を形成する。体長40cm程度になる大型種で、釣り餌として利用される。

ホンヒトデ

ミズクラゲ

東京湾で最も多く観察されるクラゲ。生殖腺が傘をすかして見えるため、ヨツメクラゲとも呼ばれる。刺胞毒は弱い。


マハゼ

東京湾ではハゼ釣りの対象魚として有名であり、新浜湖内でも多数が見られる。幼魚は第一背鰭の後縁に黒色斑がある。


マナマコとアサリ、アオヤギ、シオフキ

マナマコは内湾砂泥底のものは写真のように黒色のものが多い。食用


オオノガイ

殻長10cm程度になる大型種。殻長と同程度の長い水管をもち、殻を完全には閉じられない。食用になり、海外では前記のホンビノスガイ同様クラムチャウダーに利用されている。

ユビナガスジエビ

内湾域に多いスジエビ類。体全体に色素が分布しているため、色づいて見えるが、固定標本にすると色が失われるため、近似種(スジエビモドキ)との区別が困難になる。

ヤドカリ

イソギンチャク


イソガニかと思ったけどよく分かりません。
人工干潟で見たイソガニと随分違う気がするのですが、どちらがイソガニ?

 


支柱にビッシリとムラサキイガイ

地中海地域が原産の移入種。1930年代に日本に入り、潮間帯の岩盤や岸壁などに足糸で付着する。船舶の汚損生物としても有名。

アカニシの卵のう

アカニシ

ヨーロッパではカキなどに甚大な
     被害を及ぼしているそうですが、食べると非常に美味らしい。

マメコブシガニ

コブシガニ科の種では生息水深が最も浅く、内湾潮間帯の砂底で見られる。甲の割に大きな鉗脚を持つ。後ろ側の歩脚が小さくなっているため、縦に歩くことができる。


マンハッタンホヤ

名前の示すとおり、北米原産の移入種。1972年ごろに瀬戸内海で発見された。透明〜黄褐色の被嚢を持ち、全体に球形に近い。
 
   
時間はあっという間に過ぎ再び乗船して猫実川沖の海底の砂を採取して自然干潟の砂と比較しました。
 

垂直に海に入れないと砂が取れない!

採取した砂をパットに移します。

スコップで割ってみても生物は皆無です。ドロドロのヘドロ状態で臭います

人工干潟で見た生物

防波堤から人工干潟までの鉄橋は途中で切れている。

人工干潟まで伸びた巨大な鉄廃材

人工干潟には船が直接付かないので膝まで濡れて歩きます。長靴は欠かせない。

人工干潟
カキ養殖の名残りの支柱が、まるで荒れ果てた林のようで、砂地はタマシキゴカイの糞塊が痘痕のように続いている
目を閉じれば、かつて、大勢の潮干狩りの人々で賑わった光景が浮かんでくるようです。


イソガニ?

自然干潟で見たイソガニと随分違います


 


カイメン

以前は大きな海綿が沢山採れたそうです

タマシキゴカイの糞塊

(通称モンブラン)
ケーキのモンブランに似てるからだけど
これは食べる気がしない!

一面タマシキゴカイの糞塊

腐食した鉄橋にカキがビッシリ

タマシキゴカイ
砂泥底の干潟面に、モンブランのような糞塊を積み上げているのがよく見られる

タマシキゴカイの卵塊
卵塊 も無数にあって踏まない様に
注意して歩きました



タテジマイソギンチャク

自然干潟でも杭に付いていました。
陸上では口を閉じています
体壁は濃緑色〜淡緑色で、橙色もしくは白色の縦縞があり、その配置には変異がある。槍糸をよく出す

ケフサイソガニ(腹側)

爪の部分に毛が生えています
毛が無い方がメスらしい。
やっぱりね!

 


ヤドカリ
干潟の生物の説明は
東邦大学理学部
「東京湾生態系研究センター」の
資料を参考にさせていただきました。

カキ養殖の名残に付いたアオサとヤドカリ

河川から大量に流出する水や土砂の流入と、潮流の活発な海水運動などで形作られて、多くの生物を育んできた「三番瀬」ですが、現在は又、多くの問題も抱えているようです。1960年に始まった埋め立てによって海域の面積が狭くなり、河川との繋がりが実質上絶たれ、海水の活動が低下し、すっかり動きの無い海、沼化してしまった状態です。
それによって江戸前と称して珍重されてきた魚貝類の漁獲高が極端にへり、その上、三番瀬の近くの「宮内庁鴨場」から飛んできて魚を獲る川鵜の被害で魚が少なくなった事、又海苔の養殖場も食い荒らすようで、漁師さん達は、鳥獣保護の前に漁師保護を・・・と訴えている。

又、第二期埋め立ての中止によって、埋め立て途中の直立護岸がむき出しのまま腐食して台風などで高波でも来れば崩壊の危険を孕んで現在は立ち入り禁止となったまま、一向に工事の進展は無い。などなど、多くの問題を抱える「三番瀬」ですが、このような劣悪な環境でも生物達は確かに生命を受け継いでいました。今より少しでも良い方向に進むには誰が何をしたら良いのか!何もしなければ魚も鳥も姿を消してしまうのは、ずっと先の事ではない気がします。考えさせられた一日でした。