立山連峰剱岳

2005.08.03.〜08.07
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[行程]
一日目=扇沢→→黒部ダム→→室堂(泊)
二日目=室堂(2450m)→→浄土山(2831m)→→一の越(2705m)→→雄山(3003m)→→大汝山(3015m)
             →→冨士ノ折立(2999m)→→真砂岳(2861m)→→別山(2874m)→→剱山荘(泊)
三日目=剱山荘→→一腹剱(2618m)→→前剱(2813m)→→平蔵ノコル→→剱岳(2999m)→→剱沢小屋(泊)
四日目=剱沢小屋→→剱御前小屋→→室堂→→扇沢

[一日目]    8月3日(水曜日)
早朝家を出て、扇沢に着いたのが9:30、駐車場には既に車が一杯だった。有料駐車場は1日1000円,勿体無いから駐車場以外のスペースを探して停めた。誰も考えることは同じと見えて、その一帯は無料駐車場化していた。
扇沢〜室堂往復料金¥8500、5日間有効だ。25リットル以上の手荷物料金¥210。何時も思うんだけど〜、この手荷物料金は体重込みで値段を決めて欲しいな!不公平だ!

そんな思いとは関係なく、扇沢ステーション〜黒部ダム〜黒部平〜大観峰〜室堂と、トロリーバス、ケーブルカー、ロープウェイ、更に又トロリーバスと乗り継ぎ、途中の黒部ダムで圧倒されて、歓声を上げ、終点の室堂に下り立ったのは13時。トンネルの中を走っている間に、もうここは2450mの高山植物の花々が咲き競う室堂平だ。人間って凄い!こんな場所まで自然を破壊してしまうなんて・・・・思ったより寒くない。登山客以外に親子連れや、観光客の姿が目立つ。室堂平を見下ろすように取り巻いている峰の所々に雪渓が残っている。まだ昼過ぎなのに、まるで夕方のようにどんより雲が低く垂れ込めている。

明日からの天気を気にしながら今夜の宿「室堂山荘」に向かう。夕食まで時間が有るので付近を散策。高山植物の花々が一面に咲き誇っている。こんな高山の山小屋にお風呂が有るというので、汗を流すだけでもと思って入ったら、何と立派なお風呂が有ってヘアシャンプー&ボディーシャンプーまで置いてあったのにはビックリ!山小屋のお風呂だから石鹸は禁止だと覚悟していたので感激!夕食も美味しかったし、もう山に登らないでここだけで充分だと思ってしまった。

扇沢から乗り込んだトロリーバス

黒部ダム

ダム放水に架る虹

室堂

ハクサンイチゲ

シナノキンバイ

ミヤマダイモンジゾウ

車ユリと立山連峰

イワオオギ

ヤマハハコ

ミヤマシオガマと立山連峰
花拡大

セリバシオガマ

ミクリガ池と立山連峰


現存する最古の山小屋「室堂山荘」

チングルマ
[二日目]   8月4日(木曜日)
夕べは全々眠れなかった。と言うのも、小学生の団体がうるさいのナンの!先生の注意する声も聞えてくるけどそれもうるさい!大声でふざけるは、廊下をドンドン走りまわるは、消灯時間まで続き、こっちは翌朝早いので、我慢できなくて「うるさいッ!静かにして下さい」って怒鳴ったけど、そんな物ナンの薬にもなりゃしない。寝入りバナをくじかれてその後も眠れなかったんだ。あんなうるさい団体は山小屋に泊まる資格無し。来年からテント泊にするべき。傍迷惑この上ないから!
4:45室堂山荘出発。朝靄の向こうに朝日のぼんやりとした明るさを感じながらキュッと引き締まった空気の中を歩くと、心も身体もスーーーッとリセットされて来るようだ。浄土山登山口をやり過ごして10分ほど先の展望台まで行って見た。

ウワーーッ!凄い!右から薬師岳、鷲岳、鳶岳、黒部五郎岳、笹ヶ岳、奥穂、槍、野口五郎岳,獅子ヶ岳、鬼岳・・・・が、今昇らんとする朝日を受けて目の前に佇んでいた。息を呑むってこんな時に使うんだ〜!昨日は天気が心配だったけど、晴れそう!
浄土山登山口まで引き返して雪渓を渡り登山道に取りつく。早朝の空気は気持ち良く今昇った太陽と競争のように高度を上げていく。昇りきった所は、平坦になっていて、浄土山頂上が何所か良く解らないまま、石を積み上げた場所が有ったので何だろうと思って行って見たら「軍人霊碑」と書かれた石碑が建っていました。ここが頂上ではなかった様です。

結局、浄土山頂上を確認できないまま「一ノ越」まで来て朝食。眼下に室堂カールが広がり、夕べ泊まった室堂山荘も見える。夕べの小学生たちはもう下山したんだろうか、今思うと、小さな身体でハードな登山に耐えてやっと山小屋に着いてリラックスしてたんだ!タイシタモンダ・・・・・・
まるで花が咲いている様に見えるのは、テント村の赤や黄色や青いテントの数々。下から吹き上げてくる冷たい風が心地よく、汗で衣服のへばりついた背中を通りぬけていく。周りを見るとこの場所で朝食タイムをとる人が多い様だ。山小屋で作ってもらった弁当が以外と美味しい。これから雄山への上りなのでしっかり食べておこう

展望台より

ケルンの向こうに剱岳が見える

剱岳はまだまだ遠いな〜

一の越より眼下に室堂平
!天気は最高!

あと一息で雄山神社
雄山って簡単に登れると誤解してた。結構厳しい上りが続いて、
9:15雄山神社着。大勢の登山者が社務所兼売店の前で休んでいる。山頂へは拝観料を500円払ってお札をもらい鳥居をくぐって拝観の順番待ちをする。先に拝観を済ませた人が下りてしまうと神主さんの指示に従って山頂に登る。山頂には小さな祠が有り20人ほどが立っていられるくらいのスペースが有る。360度の展望は素晴らしかったが、それにも増して感動したのは、時代劇のバカ殿様みたいに真っ白く日焼け止めクリームを顔に塗った赤い衣の神主さんが身体を小さく折りたたむようにして、小さな祠の中に入ってしまって祝詞が始まった。高い山の上でこんな事やってるなんて全然知らなかったからあっけにとられて、唯々目が点になってしまった。祝詞は、この有難い雄山頂上に這い登って来た老いも若きも、男も女も大勢の人々のこれからの行程を無事に続けられます様に・・・・・ってな感じに理解しましたけどぉ!間違ってるかな〜!ご神体はその人が座っているその石です!と、言われてビックリ飛びのいた男の人が居たけど、言われ無ければ誰も気が付かない唯の敷石の内の一枚でした。最後に神主かさんから一人一人にお神酒が振舞われて次の拝観者の番になります。ナンだか頭がボーーっとして来て、これから剣岳に向かう事を忘れてしまいそうになったくらいタイムスリップした様でした。気をとりなおして先にいそが無いと・・・・後ろ髪を引かれる思いで??
10:15雄山を後にして

雄山神社到着

一応読んでみましょう

頂上より見た社務所

雄山頂上よりの景色

雄山頂上の碑

神主さんの有難い祝詞が始まります
10:35大汝山山頂。立山は、雄山、大汝山、冨士ノ折立の総称で、その中でも最高峰の大汝山ですが、ここでのんびりしている余裕はなく、雄山にも名残を惜しんで10分程の休憩の後出発。
11:05冨士の折立はネーミングにロマンを感じるけど、峻険な岩場だった。
11:57真砂岳。この辺りから高校生とおぼしき男子20人位と、その引率者のパーティーと後になり先になりしてきた。先頭が引率者なのだが、後の方は歩き方が一定していない。下り道になると途端にペースダウンして岩にへばり付いている。ガレ場の足のすべりが怖いらしい。平らな道に出るとあっという間に視界から消えていく。周りにそんなパーティーがいるとペースを乱されて、こっちも疲れるんだよな〜!

登山道に咲いている高山植物に気をとられつつも、アップダウンを繰り返しながら、右を見たり左を見みたり・・・・
そこには雪渓を残した3000m級の山々の連続。
ほんとに良いよね〜山って、来れてよかった!と、例のごとく自分と会話する。

別山への急な上りは辛かった!高山とは言え、快晴に恵まれ、気温はドンドン上昇して、この時ばかりは焼けつくような太陽が恨めしい。やっと別山山頂に到着した。広々とした山頂には其々に昼食をとっている登山者がいて、こちらも適当な場所を探して、ここでゆっくり昼食にし様と、お湯を沸かす準備をして同行者を待ったが、待てど暮せど登ってくる様子は無い。あんまり遅いので、途中まで下って探して見たけど姿は見えない。そうこうしているうちに、これから下って行く反対側から同行者が登って来た。別山を回避して先回りし、下にザックを置いてきたらしい。ナンナンダヨーーー!ラーメンもカレーも、下において来たリュックの中なのにーーー!もう頭に来た!おなか空いたーーー!

大汝山頂上は地味だった!

大汝山小屋

お〜い!私も運んで〜!

富士の折立

タカネヤハズハハコと黒部川

雪渓

素晴らしかったからもう一度

タカネシオガマ

紫のイワギキョウと白いタカネツメクサ


別山に向かう尾根道

別山山頂

別山山頂の這松の花

マ!この程度の行き違いはショッチュウの同行者なのだが・・・・・・ナンテ事も有って、結局別山山頂で30分も待ちくたびれて、剣沢への分岐で我慢できずに朝の弁当の残りを食べるはめになった。別山から15分ほど下った所が、剣御前(2776.6)と剣沢への分岐なのだが、案内標識が何も出て無いのでうっかり分岐を通り過ぎそうになった。現に、間違って剣御前への道を行ってしまって引き返して来た老人に会った。今夜は剣山荘に泊って明日「剣岳」に登るそうだ。「お先に」と言って立ち去った老人を見送って、お腹がいっぱいになって少し機嫌が直り、さあ、遅くならないうちに山小屋に着かないと寝る場所が無くなっちゃう!思わず下る足にも拍車が掛かり、先に行った老人に追い付いた。

ここはもう剱沢。河原には色とりどり、様々なテントが思い思いに張ってある。河原の向こうを見上げると頭上に大きく聳えているのはまさしく「剱岳」ではないか、夕日を浴びて神々しくさえみえる。明日は昇るぞ〜!テント泊の人々は、ここを起点に毎日アチラコチラの山をピストンしているのだろうか。今はのんびりと贅沢な時間をすごしている。剣沢小屋の前を通り過ぎ、石の上でまどろんでいたチェックの登山シャツの男性に今夜の宿泊先「剱山荘」への道を尋ねた。「その先の診療所の前を下りた道です」教えられた道を進むと、まだかなり雪渓が残っていて、山岳救助隊が訓練をしている。しっかり訓練してくださいよとつぶやきながら、その側を元気に通り過ぎて、いくつか雪渓を渡ったけど、目指す小屋は剱岳の懐に隠れ、時々ガスに見え隠れしているものの、全然近づかない。先を急ぐ余りペースを上げ過ぎてかなりへばって来た。疲れた!やっと剱山荘に着いて、受付を待っている列の最後尾に付き、受付を済ませ、部屋に入った。

剱沢のテント村

診療所隣の剱沢派出所

山岳警備隊の救助訓練

ツガザクラの一種?
ホント疲れた!
明日が本番なのに!

夕日に映える剱岳
部屋には誰もまだ居ないけど、隅の方に荷物が有るから先客がいるのだろう。この小屋もお風呂に入れるらしい。時間を待って真っ先に行ったら、もう入ってる人が居た。かなりの年齢に見えたけど素早い!「早いですね」と話しかけたら、お風呂の前で入浴時間になるのを待っていたそうだ。ナットク!石鹸は使えなくても汗を流せるだけでも有り難いですね!と、裸同士で気持ちを通わせる。汗を流してサッパリして夕食。イマイチ食が進まない。すると、マイクでお知らせが有り、今日は他の山小屋が一杯で、断わられた人を受け入れる為に各部屋定員オーバーになる可能性があります。と言う事で、最初10人部屋に7人だったのが、二人増え、又二人増え結局14人になってしまった。しかも、お互いに頭が付き合う状態2列に布団を敷いていたので、すぐ上に寝ていた男性のイビキが物凄くて、しかも暑い!窓をあけると虫が入ってくるので開けないで下さい、と書いてあるけど、この暑さでは開けないでは居られない。イビキの凄さに廊下に布団を持ち出してみたけど寒くなって又部屋に舞い戻り、結局、早立ちの人の準備の物音がするまで眠れなかった。
[三日目]     8月5日(金曜日)
眠れないまま窓を見ると、まだ暗い山道にライトの明りが点々とつながって見える。剱岳山頂で、ご来光を拝もうという奇特な登山者が早立ちして行く。私達も予定より早く出発する事にした。どうせ眠れないのだし!イビキの君は健在で、思わず無呼吸症候群を心配してしまう。

4:18剱山荘出発。朝靄に霞む山々が黒く周りを取り囲んでいる。まだ薄暗い登山道を足元を気にしながら尖ったゴロタ石の上りを進む。眠ったままの高山植物を朝露が覆っている。
8:45一服剱着。名前の通り、丁度一服するのに良い場所だ。鹿島槍、五竜岳が、今登らんとする太陽を待ち構えている。
5:34前剱着。その後ろに堂々と来る者を拒もうとするかの様に剱岳が居た。デッカイ山だな〜ア!あの山を登るのか〜「ルートなんて何所にあるのさ〜!ザケンじゃ無いわよ〜!」と、心に叫ぶ!すると、ササッと事もなげに私達を追い越していったのは、夕べお風呂で一緒になったかなりの年齢の婦人だった。真赤な上着にストックだけ持って居る。サポートしているのは息子さんだろうか?見のこなしから山のベテランと見た。難所に来ると婦人の行動をじっと見守り、「焦るな!」と、一言注意するだけだ。70歳も有に超えただろうと思えるその婦人は、特別大変そうでもなく淡々と先に進む。若い頃から山を知り尽くしているかのようだ。すっかり見とれてしまって遅れを取った。ふと我に返り見上げると空は澄み渡り、今日も良い天気になりそうだ。
少し心配なのは、今朝山小屋を出る前にお腹の調子が悪く下痢っぽかった事だ。そのせいかイマイチ気分が優れない。こんな気持ちで山を歩くのは初めてだ。それでも、見渡せば3000m級の山々が何所までも連なり、いたるところに残る雪渓が朝日を浴びて眩しい。谷から吹き上げる風に流れる汗も退いて、体調の悪さも忘れる位なんだけど・・・・エッ?谷に架る細いステンレスの板・・・・ウソッ!ここ渡るの?手すりは?無しか〜!ひゃーー!距離にしたら5〜6歩なんだけど、右も左も谷底だよ〜ん!深呼吸をして精神集中してここを渡らねば始まらない・・・・フゥーー!まず最初の難関をクリアして、話に聞いていた「蟹の縦這い」はこここかな?と思うような個所が何度も有って、いい加減疲れてきた時に本命の「蟹の縦這い」だ。岩が覆いかぶさって来てるジャン!自分の身長から見てかなりハンデを感じるな〜!ヨシッ!ここは日頃のストレッチの成果を発揮するところだと、胸よりも高く短い足を持ち上げ、岩に取りつけられている鎖を頼りに又、次の鎖に取り付く。ヤットの事でクリア!フーーーッ!手強い!

一服剣までの上り

一服剣より朝焼けの空

カニノタテバイ
7:00やっとの事でたどり着いた頂上は意外と広くて、小さな祠が有り、取り合えず皆手を合わせている。これが剣岳の頂上か〜!感無量だけど、他の山の頂上と変わらないな!(当たり前だけど)当然のことながら展望は素晴らしい。ここまで凄く大変だった!私って凄い!と思いたいけど、まわりを見渡せば小さな子供もいれば、例の高齢の婦人もちゃんと居るでは無いか!皆凄い!マダマダ私は修行が足りないのかな〜!体調の悪いせいも有って今日は弱気なNonkyでした。ここで弱気を出しては下りの「蟹の横這い」とやらをクリアできないでは無いか!自分を励まし2999mからの展望を脳裏に焼き付け立ち上がる。7:00下山

登ってくる時も大変だったけど下りは更に恐ろしい!一時たりとも気が抜けない。大きな岩を越え鎖を掴み、谷底を見ないように下る。下りの名所、じゃなかった難所「蟹の横這い」は屏風状の岩を、鎖を頼りに横ばいになって通るのだが、ほんの少しの岩のくぼみに足を預ける。マッタク誰がこんなルートを考えたのか他にもっと優しいルートは考えられなかったの?と、又心に叫ぶ。難所を抜けて安心したのか疲れがどっと出てもう足が先に進まない。空はあくまでも青く澄み渡り、太陽は疲れた体に鞭打つように照りつける。もう駄目、動けない。そう思ったとき救助のヘリコプターが頭上に飛来し・・・・と思ったら、山小屋の簡易トイレの運搬用ヘリコプターでした。おーーーーい!ヘルプミーーー!呼べど叫べどむなしくヘリは小さくなって山の向こうに消えて行ったのでした。

やっとのことで剱山荘に帰り着き朝食用の弁当を広げたけど喉を通らない。山菜そばなら食べられるかと注文してみたけど出てきたのは摩訶不思議な山菜そば、余計喉を通らなくて益々メゲタ体に鞭打って今夜の宿泊先剱沢小屋まで這うようにして辿りついた。途中に診療所があったので飛び込んでお腹の薬を下さいと哀願したら、先生は夕方で無いと来ないので夕方また来てくださいと言ったのは山岳救助隊の人だった。更に遜って哀願すると、隊員のですがと言いながら正露丸をくれた。これも救助の一環だよね!

剣岳頂上

剣岳頂上より

下りのカニノヨコバイ

お花畑の向こうに剣岳

トウヤクリンドウ

トイレを運ぶヘリコプター
その夜は最悪だった。頻繁にトイレに通うので同室の人の迷惑になると思って廊下に出てトイレに通ったがあんまりつらいので外を見ると川向こうの診療所の明かりが付いているのが見えた。今何時だろう。みんな寝静まっていびきなど聞こえてくる。兎に角診療所まで行ってみようと外に出た。真っ暗で診療所の明かりは見えるけど何処が道かよくわからない。うろうろしていたら誰かが歩いてきた。診療所までの道を尋ねると「どうしました?」「お腹が痛くてずっと下痢してるんです」「山の水は生水なので飲みすぎるとお腹を壊す人もよくいるんですよ」といって診療所まで連れて行ってくれて寝ていた先生を呼んでくれた。出てきたのは、まだ学生のような若い先生が二人だった。

症状を聞いて薬を何が良いか二人で専門用語で話している。今まで病院とはトンと縁のなかったNonkyにとって薬の名前を聞いてもちんぷんかんぷんで、「熱はありますか?」「無いです」「一応計ってみましょう」といって体温計をくれた・・・・これ何処で図るんだろう?口の中?わきの下?ともぞもぞしていたら「わきの下で測ってくださいね!」「なあんだ、子供の時と同じジャン!」熱なんて無いのにと思っていたけど「38度ありますね!」「うそっ!」そういえば小屋についてから寒くて外にも出られなかったなぁ・・・・とりあえず診療所にあった薬を二回分もらって小屋に戻り、部屋の中に入るのはまたほかの人の迷惑に成るので食堂に布団を持ち込んで横になった。お腹は時々キューーーっと痛くなるけど兎に角、周りを気にせずに眠ることができた。
[四日目]     8月6日(土曜日)
朝、下痢も大分落ち着いて、この分だと歩けそうなので出発することにした。診療所に立ち寄って前夜のお礼を言うと、若い先生は「どうですか?歩けそうですか?夕べより大分顔色が良いですね!気をつけて!」といって見送ってくれた。診療所があってほんとに良かった。山でこんな思いをしたのは初めてで柄にも無く謙虚な気持ちになってしまった。(柄にもなくは撤回します!)チングルマやハクサンイチゲの群落する剱沢を一時間ほど登って剣御前小屋まで行くともう室堂が眼下に見える。あとは室堂目指して下るだけだ。しかし、下っても下ってもなかなか室堂のターミナルが近づかない。そこに見えているのに〜!ひたすら下って、やっとキャンプ場を抜けて今度は長い階段が待っていた。最後のこの階段は辛かった〜!地獄谷から蒸気が立ち昇っている。ここ室堂には温泉設備の有るホテルが有るらしい。温泉に入りた〜い。観光客の数が急に増えて、行き違いもままならない。そういえば今日は土曜日だ。そのうち、なんだか人だかりがしていて、「わーー見えた見えた!」と騒いでいる。指差す方を見たら雷鳥の親子が岩と同じ色をして動いていた。必死で探さないと判らない位保護色になっている。山の上では見れなかったのにこんな人間の多い場所にいるなんて・・・人間は天敵ではないことを感じているのかな!生きて戻れた!と、感じた一瞬でした。

チングルマ

剣御前小屋より眼下に室堂

ウサギギク

地獄谷
[後記]
今回の山「剱岳」は、今まで登った内で一番辛かった。体調が悪かったせいもあるけど、峻険なルートに緊張の連続で挑戦&クリアの連続、気を抜くときがない。のんびり景色を楽しみながらの山歩きとは程遠い難所続き、それでも、今まで山歩きを続けて来たからには、一度は剣岳に・・・・と、心に決めて、やっと今夏曲がりなりにも剱岳の頂上に立つことができました。とりあえず良かった!室堂ターミナルからトロリーバスに乗り込む時思わず振り返って一例した。山に、谷に、花々に、出会った人々に、そして大自然に・・・・